物流倉庫・工場での暑さ対策例を解説 個人でできる熱中症対策を取り入れよう

気温が28度以上になると、熱中症に罹るリスクが高まるといわれています。
熱がこもりやすい工場内では、空調なしだと28度近い温度になることも多く、夏場は暑さ対策が必須です。
この記事では、会社や個人にできる物流倉庫、工場内の暑さ対策を紹介します。
工場内の暑さ対策は熱中症予防だけでなく、製品の品質や仕事の効率を保つためにも重要です。
倉庫内の暑さ対策を見直して、今年も夏の暑さを乗り切りましょう。

物流倉庫や工場が暑くなる原因

物流倉庫や工場が暑くなる原因は、作業環境や空調の問題など様々です。
自社の倉庫に当てはまる点がないか確認してみましょう。

折板屋根から放射する熱が倉庫内の温度を高める

折板屋根とは凸凹とした形の金属製の屋根で、倉庫によく使われます。
高温になりやすい特徴があり、夏場には70度から80度に達することも。
折板屋根から放射される熱は輻射熱と呼ばれ、人体の体感温度を上げる働きがあります。

空調設備の不調、老朽化

工場内が熱いのは、空調設備の不調や老朽化が進んでいるからかもしれません。
広く、間仕切りのない物流倉庫内で空調を十分に効かせるには、パワーが必要になります。
正常に機能している場合も定期的に見直し、冷房効率を保ちましょう。

機械からの排熱

機械からの排熱により、倉庫内が暑くなっている可能性があります。
外気の暑さと機械の熱が合わさることで、屋外以上に倉庫の温度が高まることも。
排熱が倉庫内にこもると、サウナのように蒸し暑くなることもあるため注意が必要です。

物流倉庫や工場の暑さが引き起こす問題

物流倉庫や工場の暑さは、健康被害や仕事の効率低下、製品の品質悪化など会社に様々な損失を与えます。
従業員を守るだけでなく、会社の利益を増やすためにも暑さ対策は重要です。

熱中症などの健康被害

倉庫内が暑くなると、仕事中、熱中症に罹るリスクが上がります。
熱中症を予防するための指標としては、WBGT値といわれる暑さ指数が参考になるでしょう。
参考気温31℃以上にあたるWBGT値が28(厳重警告)を超えると、熱中症患者が著しく増加するといわれています。

作業効率の低下

汗をぬぐったり、服が汗でぬれたり暑さによる不快感が高まれば、仕事に対する集中力は低下します。
さらに暑さ対策として水分補給などの休憩時間を設ける場合には、作業時間も減少し、その結果、仕事の効率は低下するでしょう。

製品の品質悪化

暑さ対策を怠ると、倉庫内の製品が劣化する恐れがあります。
特に食品や精密機器、湿度に弱い繊維類などは、温度、湿度管理に注意が必要です。
製品の品質を保証するため、作業場だけでなく保管倉庫にも暑さ対策を施しましょう。

熱中症が起こりやすい条件とは?

熱中症対策をする上では、まず熱中症が起こりやすい条件を把握することが大切です。
熱中症は、気温や湿度が高く、風通しの悪い環境で生じやすいといわれています。
また室内では、空調なし、締め切った環境などで熱中症が起こりやすいです。
環境的な要因以外にも、高齢者や肥満体形の人、糖尿病患者などの身体的な特徴により、熱中症リスクが高まることも。

会社にできる物流倉庫・工場の暑さ対策

会社にできる、物流倉庫や工場の暑さ対策を紹介します。
以下で紹介する対策のうち一つでも取り入れれば、工場の作業環境がより快適になるでしょう。
夏の熱中症対策にぜひ役立ててください。

業務用エアコン、扇風機の設置

空調なしの倉庫には、業務用エアコンや扇風機を設置するのがおすすめです。
エアコンなら温度調整できるので、倉庫の温度を常に最適に調整可能。
エアコンは維持費が高いのがデメリットですが、扇風機などその他の暑さ対策と併用すればコストを掛けすぎずに暑さ対策できます。
初期費用を抑えたい場合、レンタルやリースサービスを使うのもおすすめです。

シーリングファンの設置

シーリングファンとは、天井に取り付けられる扇風機の一種です。
空気の循環を促進するため、倉庫内の温度を均一に保つことができます。
倉庫は風通しが悪く空調が効きにくい傾向がありますが、エアコンなどと併せて使えば空調効率を上げることが可能です。
ただし天井が高すぎるなど構造上の理由で、設置ができない場合もあります。

スポットクーラーの設置

スポットクーラーとは、特定の場所や狭い範囲を冷却するための冷房機器のこと。
例えば工場の作業エリアや保管倉庫など、部分的に冷却が必要な場合に効果的です。
キャスター付きのタイプが多く移動が簡単なため、使わない時は片付けたり、冷却が必要な場所に応じて位置を変えたりすることもできます。
空調なしの倉庫でコストを抑えた熱中症対策をしたいなら、スポットクーラーの導入がおすすめです。

屋根に遮熱シートを取り付ける

折板屋根から放射される、輻射熱を抑える対策です。
遮熱シートとは、アルミニウムなどの金属を配合した特殊な素材で作られたシート。
屋根に取り付けることで、工場内の温度上昇を抑えることができます。
空調なしの倉庫での暑さ対策としてはもちろん、冷房効率を上げたい場合にもおすすめの方法です。
省エネ対策や、エアコンの設置数を減らしたい場合にも、導入を検討してみてください。

屋根用スプリンクラーの設置

屋根用スプリンクラーの導入も、折板屋根からの輻射熱対策に有効です。
屋根用スプリンクラーとは、建物の屋根に設置され屋根表面に水を散布する装置。
水が蒸発する際に生まれる気化熱により、空調なしでも屋根の温度を下げる効果があります。
空調のランニングコストを抑えたい場合に導入されることが多い、環境に優しい暑さ対策です。

間仕切りカーテンで空調効率を上げる

工場に間仕切りカーテンを取り付けることで、空調効率を上げることができます。
間仕切りカーテンとは、室内外に設置できるビニールのカーテンのこと。
工場内は広く天井が高いため空調が効きにくいことも多いですが、間仕切りカーテンを付けることで室内温度を効率的に下げられます。
間仕切りカーテンは暑さ対策だけでなく防虫にも効果的なので、工場に設置して損はありません。

夏は作業時間を短縮する、休憩を増やす

空調なしの倉庫など設備による暑さ対策が困難な場合、作業時間の短縮、こまめな休憩を増やすなどの工夫をしましょう。
作業時間が減れば仕事の生産性は落ちますが、従業員の健康を第一に考えるなら必要な対策です。
夏場は長時間の連続業務を減らしたり、こまめな水分、塩分の補給を呼び掛けたり、会社が主体的に熱中症対策を行ってください。

個人にできる物流倉庫・工場の暑さ対策

会社だけでなく、個人にできる暑さ対策もたくさんあります。
夏場の物流倉庫、工場業務に熱中症対策を取り入れたい人は参考にしてください。

こまめな水分・塩分補給

水分、塩分補給は、個人でできる基本的な熱中症対策です。
ポイントは、喉が渇く前に水分補給すること。
喉が渇いた時には既に脱水が始まっている可能性が高いです。
またコーヒーや、紅茶、緑茶などカフェインを多く含む飲料は利尿を促すため、水分補給には向いていません。
夏場の工場業務で汗をかく場合には、スポーツ飲料や水+塩分を摂取するのがおすすめです。

ファン付きベストの着用

ファン付きベストは、ベストの内側に小型ファンが内蔵された衣服です。
ファンが外部から空気を取り込んで循環させることで、身体を涼しく保つことができます。
ベストの素材は通気性が良く軽量なものが多く、中には速乾性のある素材やUVカット機能が付いたものも。
モバイルバッテリーと接続することで、電源がない環境でも使えるため、長時間の工場業務におすすめです。

ネッククーラーの装着

ネッククーラーは、首に装着して使用する冷却装置です。
冷蔵庫で冷やして使用するジェルパックや、ペルチェ素子が内蔵された電動タイプなど様々な種類があります。
首には太い血管が通っていて、その部分をネッククーラーで集中的に冷やすことで、体温を効率的に下げることが可能です。
ネッククーラーは持ち運びやすく手頃なものも多いため、個人でも購入しやすいでしょう。

コンプレッションウェア、冷感インナーの着用

コンプレッションウェアや冷感インナーの着用も、個人でやりやすい熱中症対策です。
コンプレッションウェアとは、スポーツ向けに作られた身体にフィットする形状の衣服。
通気性や速乾性に優れているのが特徴で、汗が服の中にこもるのを防ぎます。
また冷感インナーには肌に触れるとひんやりと感じられる効果や体温を下げる効果があり、熱中症対策に効果的です。

ヘルメットインナーの着用

ヘルメットインナーとは、ヘルメットの内側に装着するインナーのこと。
通気性や吸湿速乾性のある素材で作られたものが多く、汗を素早く吸収し蒸発させる効果があります。
さらに抗菌、防臭効果があるものなら、より快適に仕事できるようになるでしょう。
フォークリフト作業などで長時間ヘルメットを被る人におすすめの暑さ対策グッズです。

暑さ対策グッズはレンタルもおすすめ

エアコンなどの空調設備の導入は暑さ対策に有効ですが、ランニングコストが掛かるのがデメリット。
コスト面の理由から空調の導入を躊躇っているなら、レンタルサービスも検討してみましょう。
レンタルなら、エアコンや扇風機、スポットクーラーなどあらゆる設備を借りることができます。
また初期費用を掛けずに最新の業務エアコンを導入したいなら、リースサービスの利用もおすすめです。

まとめ

今回は会社や個人でもできる、物流倉庫・工場での暑さ対策を紹介しました。
夏場の工場内は、屋根から放射される熱や空調効率の悪さなど様々な要因によって暑くなります。
従業員の健康を第一に考え、会社側が暑さ対策を行うことが重要です。
また個人でも冷感インナーを装着するなど、ちょっとした工夫で熱中症に罹るリスクを抑えることができます。

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