人口減少に伴う生産労働人口の減少や働き方改革が推進されている現代において、その解決策として多能工化が注目されています。
導入されることで、企業にも従業員にも数多くの恩恵をもたらすとされていますが、言葉の意味がわからない人もいるでしょう。
本記事では、多能工化についてどのような意味や言い換え方などがあるかについて、メリット・デメリットなどを踏まえて紹介します。
この記事を書いた人:受発注ライフ編集部
『受発注ライフ』は、2024年3月22日に誕生した、株式会社カンナートのWebメディアです。
株式会社カンナートは西新宿にある創業20年目のシステム開発会社です。
このメディアでは、受発注業務や物流、通販にお困りごとのある方々に向けて、 業務改善のアイデアや業界の新しい動向などを発信していきます。
多能工化とは? 意味を解説
労働効率化の場面で使われるワードである「多能工化」。
こちらの段落では言葉の意味や誕生した背景、言い換えワードなどについて紹介していきます。
多能工化の意味とは
多能工化の意味とは、一人の社員が状況に応じて複数の技能・技術を持つことで、複数の業務をこなせることです。
この言葉については、トヨタ自動車工業の元副社長である大野耐一氏が、業務効率化のために考案したとされています。
主に製造業にて利用されている言葉でしたが、近年ではサービス業や事務職、運送業など幅広い業種に推進されている概念です。
多能工化が誕生した背景とは
生産工場において、時期や製造工程によって人手が足りない場合や、逆に人手が余ることがありました。
そういったときに、人手が足りないところに余った人材をうまくフィットさせることはとても重要。
多能工化を進めることで、人員を余らせることなく効率的に作業できることを目指したのです。
多能工の反対の言葉は単能工
多能工の反対の言葉は単能工と呼ばれています。
単能工とは、ひとりの従業員が単一の業務を行うことで、多能工とは違い一つの業務に集中して働くという反対の意味を持つものです。
マルチな人間ではなく、スペシャリストを目指すことに特化しており、従業員の得意分野を生かしやすい方法になります。
多能工の言い換えはマルチスキル・マルチタスク
多能工という言葉を言い換えると、マルチタスクやマルチスキルといった言葉に言い換えられます。
どちらかと言えばマルチタスクの方から多能工と言い換えられることも多く、こちらの方が聞きなじみが多い方もいるでしょう。
多能工化・マルチ化を推進するメリット
多能工化に関して、従業員にも企業側にも多くのメリットがあります。
双方に与えるメリットについて、以下の項目に分けて紹介していきましょう。
業務負荷が平準化
多能化が進んでいくことで、従業員の労働負担を平準化できます。
従業員側にとっては、一部の人に業務負担が偏らず、労働負担の差を減らせるので、忙しい人に反対されにくいのがメリットです。
また、企業側からは余った労働力を多忙な部署に配置でき、人員を無駄なく利用できます。
組織のチームワーク向上
従業員の技能のマルチ化で、各従業員が担当範囲外のことを人任せにせず協力し合えるから、従業員同士でチームワークが向上します。
企業としてもチーム内の動きがよくなることで、業務効率改善につながる点ががメリットです。
業務の属人化からの脱却
多能工化・マルチ化の推進により、特定の従業員しか持ちえない技能が複数の従業員にも扱えられます。
属人化した業務があることで、技術継承が途絶えることや業務の停滞を防ぐメリットも。
技術の損失防止と人材育成コストを抑制できるでしょう。
柔軟性の高い組織づくり
従業員側としても、マルチスキルにより多くの業務をこなせるので、柔軟に複数の業務をこなすことができます。
また、企業側からしても人員の能力が複数あるこのは大きなメリット。
必要なところに必要な人材を投入できるといった企業運営が可能です。
働き方改革の実現
複数の作業が必要な場面では、個々の能力のバランスが重要。
手の空いた人が作業し、作業に滞りがない状態を作れば、労働効率が上がります。
企業側も働き方改革を推進している現代にて、労働時間の減少と効率化を実現できるのです。
多能工化・マルチ化のデメリットや失敗する理由
多能工化・マルチ化についてメリットを挙げましたが、推進が難しい面もあるため失敗もあるでしょう。
失敗の原因やデメリットについて、企業側と従業員側からの立場から4つ紹介します。
育成コストがかかる
一人が学ぶスキルの内容を分散すれば育成時間は短いですが、マルチ化・マルチスキルとなると、人材を育てるのに多くの時間がかかります。
企業の人材育成コストがより大きくなると同時に、従業員側も仕事時間内における教育時間の確保が難しいと、多能工化推進を反対されやすいのがデメリットです。
人事評価制度を見直す必要がある
今まで特定の業務のみの出来にて人事評価をしていた場合、より多面的な評価軸が必要になります。
企業側も評価制度を見直す必要があります。
従業員側もマルチスキルでないと評価されないという可能性も。
新しい評価が定まるまで一時的にどのような業務を行えば評価されるかという混乱を生じさせます。
社員のモチベーション低下
従業員からすれば、多能工化によって複数の業務をこなす量が増えるでしょう。
業務負担及び、スキルが身につかないことによるモチベーション低下がデメリットになります。
モチベーション低下は労働効率の低下や離職を意味しており、企業側のコスト増大と効率化の失敗が懸念されるでしょう。
社員の専門性が薄くなる
一人の従業員がマルチスキルを持つことで、一定の作業をそつなくこなせる分、反対に特化した技術を失うことが多いです。
企業側も効率化のため推進しただけ、特化した技術を持った人材を喪失し、没個性的な企業になって埋没化する危険性があります。
多能工化を失敗させないポイント
多能工化の推進は多くのハードルがありますが、実現したときには企業に大きな利益をもたらします。
意味のある導入をして失敗しないようにするのに、いくつかのポイントをまとめました。
社員の適性を考慮
社員の適性を考えることは、マルチスキルを進めるには大きいです。
社員の得意分野・苦手分野を考慮しないで行うと、マルチスキル習得が効率的にできなくなってしまいます。
さらに、没個性化やモチベーション低下という失敗をするおそれも。
事前に能力を確認しつつ、何処からのばしていけばいいのかを把握してから進めましょう。
適切な評価体制を構築
評価体制についても、適切なものを構築する必要があります。
どのようなスキルを、いつ・誰に・どのようにして行うか、なぜマルチ化をする意味があるかを考えつつプランを立てる必要があります。
短い期間で育成を終えると、スキルが中途半端になり、導入した意味も分からなくなるので、育成計画はしっかりとしましょう。
スキルマップを作成
計画を立てた後は、マルチスキルがどれだけ身についているかスキルマップを作成する段階に入ります。
育成の成果がどれだけ出ているかの意味が確認がしやすく、今後の育成方針と人事評価の明確さにつながるのです。
社員のモチベーション維持にもなり、今後の目標も立てやすくなるでしょう。
多能工化しやすい業界・業種とは
多能工化についてのメリット・デメリットなどを紹介しましたが、導入するのにもしやすい業界や業種があります。
元々、製造業や工場といったいくつかの作業工程が分かれている業界は、多能工化が提唱されただけあって向いている業界です。
その他にも、接客や発注、品質管理など多岐にわかる業務があるホテル業や小売業も多能工化しやすい業界や業種だと言えます。
言い換えれば、複数の業務や家庭がない業界・業種には不要です。
多能工化の成功事例
多能工化した事例としては、東急リゾーツ&ステイ株式会社が挙げられます。
ホテル、ゴルフ場、スキー場、別荘地などといった多岐にわたる施設運営をしていますが、施設毎に業務及びサービスのばらつきがありました。
多能工化教育を行うことにより、施設毎に異なっていた業務が標準化し、多能化に成功したのです。
まとめ
多能工化を推進することは、一見するとかなり難しい部分も多いです。
しかし、正しい計画を立てて進めていくことで、数多くのメリットを得ることができます。
多能工化は、働き方改革や今後の労働人口減少時代には必要な手段ですが、一方でしっかりと計画しなければ、失敗してしまうリスクも。
多能工化で特定の業務が属人化や業務停滞を招くことを防止し、継続的かつ効率的な事業運営をしましょう。