ITや建設業界など様々な世界で見られる、元請と下請の関係。
しかし言葉自体は知っていても、その意味や違いについてはよくわからないという人もいるでしょう。
そこでこの記事では、元請や下請の意味や下請けと外注の違いなどについてわかりやすく解説。
併せて元請と下請双方のメリットやデメリット、多重下請け構造の課題についても紹介します。
この記事を書いた人:受発注ライフ編集部
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元請とは? わかりやすい例で紹介
元請とは顧客から直接に仕事を受注する企業を意味し、正式には元請業者は元請負人と呼ばれます。
わかりやすい例でいえば、IT業界において顧客からのシステム開発の依頼を引き受けるのが元請です。
またIT業界以外でも、建設や物流業界などあるゆる業界で顧客と元請の関係性が見られます。
業種により元請の業務範囲は異なりますが、元請はプロジェクトの開発や進行に直接携わる責任のある立場です。
下請とは? その意味を解説
下請とは元請から業務の一部を委託される業者や個人を意味し、下請業者や下請負人とも呼ばれます。
下請は元請と違い、顧客と直接にやり取りを行うことは基本的にありません。
下請が契約を交わすのは元請であり、下請は元請の指示のもとで業務をする点がポイントです。
また下請業者で働く従業員は、下請業者が定めた就業時間や賃金のもと働きます。
一次請けとは?
一次請けとは下請が複数ある場合に、1番先に元請から業務を受注された業者や個人を意味します。
一次下請けや一次請負と呼ばれることもありますが、意味に違いはありません。
ここで注意してほしいのが、一次請けが元請と同じ意味であるという勘違いが起きやすいという点です。
それぞれの立ち位置を把握しながら、間違って覚えないように気を付けましょう。
元請と下請、一次請けの違い
元請と下請、一次請けの関係は、矢印で捉えるとわかりやすいです。
まず元請と下請の関係は、元請→下請。
また下請が複数ある場合には、元請→下請(一次請け)→下請(二次請け)→下請(三次請け)となります。
元請と下請、一次請けは、顧客から依頼された仕事をしているという点では違いません。
しかしそれぞれの上下関係には違いがあるのです。
下請けと外注の違い
外注とは自社の業務を他社に委託することを意味します。
わかりやすい例を取れば、A社がB社に業務を委託する場合、A社はB社に仕事を外注したということです。
ここでもしA社が元請、B社が下請ならこの関係を下請と呼ぶこともできます。
つまり下請けと外注の違いは、誰から仕事を委託したかという点にあります。
元請会社のメリット
元請会社は顧客とも下請とも直接やり取りができるため、交渉次第で有利な立場に立つことができます。
ここでは元請会社が得る主なメリットを紹介。
条件交渉をしやすい
元請会社のメリットの1つは、条件交渉をしやすいこと。
なぜなら、元請は発注者と直接やり取りができるからです。
元請は発注者の要望や予算に応じて、工期や品質、価格などの条件を調整することが可能。
また発注者との信頼関係を築くことで、将来的にも仕事を受注しやすくなります。
自社でできない仕事も受注できる
元請会社は下請に仕事を回すため、自社でできない仕事も受注することができます。
下請業者には専門業者も多く、元請会社は顧客からの依頼内容に合わせて業者を選定します。
業務の対応範囲を広げることでより多くの顧客から受注してもらうことは、元請にとって大きなメリットです。
作業負担を減らせる
元請会社は自社でできない仕事を下請会社に委託することにより、自社の作業負担を抑えることができます。
大規模なプロジェクトや納期が迫る案件の場合には、下請会社から多くの人員を確保することで自社の負担を減らせば良いのです。
固定費用が少ない
固定費用とは売上に関係なく発生する経費のことで、例えば人件費や家賃、光熱費などが挙げられます。
元請会社は自分の会社で必要な人員や設備を抑えることができるため、固定費用を低く抑えることが可能。
また仕事の量や内容に応じて下請会社に委託することで、変動費用を柔軟に調整することができます。
元請会社のデメリット:責任の大きさ
元請会社はクライアントだけでなく、下請に対する責任も抱える立場です。
一次請け、二次請けと下請が複数ある場合でも、元請はプロジェクトの指導者としてその全責任を負わなければなりません。
例えば下請会社の不手際で納期の遅れや事故が発生した際、クライアントへの謝罪などの対応を行うのは元請です。
また万が一下請会社が重大な不祥事を起こした場合には、社会全体から元請会社の責任が問われることとなるでしょう。
下請業者のメリット
元請よりも下の立場にいる下請業者ですが、元請と信頼関係を築くことで多くのメリットを得ることができます。
営業や広告コストを抑えられる
下請業者として仕事をする場合、自分で営業活動や広告宣伝をする必要があまりありません。
元請会社への営業はある程度必要ですが、元請が各企業に対してする営業コストと比べればかなり低く抑えることができます。
予算の少ない中小企業にとって、営業や広告コストを抑えられるのは大きなメリットです。
業務量を確保しやすい
下請や元請と長期的な契約関係を結ぶことで、安定した業務量と収入を確保できます。
一方で元請や広告や営業努力をしないと、なかなかクライアントからの受注に漕ぎつくことができません。
また自社での営業や開発などを行う必要がないため、主要な業務に専念できるのも下請のメリットです。
下請業者のデメリット
下請会社は元請会社に要望を通すことが難しい立場にいるため、元請会社の都合によりデメリットを被ることもあります。
下請会社として仕事をしたい場合、以下のデメリットがあることも把握しておきましょう。
取引条件の変更が難しい
基本的に、下請業者が元請に対して取引条件の変更を依頼することが難しいです。
例えばプロジェクトの途中で納期の変更や追加請求を行いたい場合も、よっぽどのことがない限り元請は受け入ないでしょう。
この場合下請会社は元請会社の要求に応えるために、自社の利益を犠牲にしなければなりません。
元請会社の業績に左右される
下請業者として仕事をする場合、元請会社の業績に大きく影響を受けます。
元請会社が受注した案件が少なくなれば、下請業者にも仕事が回ってこなくなるでしょう。
また元請会社が倒産すれば、下請業者は支払いを受けられない可能性があります。
元請会社に切られることも
長年元請会社と取引をしていても、元請会社の事情により一方的に契約を解除される場合があります。
また下請会社が事故や犯罪、セクハラなどの重大なトラブルを犯した場合には、それ以降2度と仕事をもらえなくなることも。
悪い噂が業界の中で広がると、他の元請会社からも仕事が回りにくくなってしまうでしょう。
IT業界や建設業界で起こりがちな、多重下請け構造
ここでは多重下請け構造について、わかりやすい例とともに解説します。
多重下請け構造は社会的な問題としても注目されているので、知っておきましょう。
多重下請け構造とは
多重下請け構造とは、1つの仕事を複数の下請け業者に分割して委託することです。
先程紹介した、元請→一次請け→二次請けという関係性は多重下請け構造のわかりやすい例です。
このような構造は、IT業界や建設業界でよく見られます。
例えば大手ゼネコンがクライアントから受注した仕事を、中堅企業に委託するというのは多重下請け構造の典型です。
多重下請け構造の問題点
多重下請け構造の大きな問題点は、下層にいる業者ほど過酷な労働環境や低賃金に陥りやすくなること。
三次請け、四次請けと構造が重層化すると、中間の業者に多くの利益をが差し引かれるので末端の業者の取り分は少なくなってしまいます。
また多重下請け構造では、トラブルが生じた際にその責任や原因の解明が難しくなることも問題点の1つ。
さらに多重下請け構造は市場競争力が衰える一因でもあり、社会的にも問題視されています。
元請と下請けの間で生じるトラブルと対応策
ここでは元請と下請との間でよく生じるトラブルを紹介します。
多重下請け構造の問題点とも繋がる内容なので、併せて参考にしてください。
元請が下請に正当な代金を支払わない
たとえ顧客は元請に対して正当な報酬を支払っていたとしても、元請は下請に対して支払いを怠ることがあります。
下請業者は元請からの支払いが遅れると、資金繰りに困り経営が危機に陥ることも。
このようなトラブルを防ぐためには、あらかじめ書面契約をしておくことが重要です。
書面契約では支払い期日や違約金などの条項を明確にしておくことで、元請に対する法的な担保を得るようにしましょう。
下請が起こしたトラブルの責任を、元請が負う羽目に
下請が納期遅延や品質不良などのトラブルを起こした場合、元請は顧客との間で交わした契約上の責任を負わなければなりません。
このような事態を避けるため、元請は信頼できる下請会社を選定することが重要です。
またコストと時間はかかりますが、トラブルが生じた際には元請が下請に指導や支援をすることも有効な対策となります。
下請けが一方的に追加請求する
下請が独断で追加の業務を進め、一方的に追加請求を行うことがあります。
本来、下請が追加の仕事をする場合には元請の指示を仰ぐ必要がありますが、それを守らない業者もいるのです。
このようなトラブルが生じた際には、元請は請求に応じるべきか判断をくださなければなりません。
対策としては、下請が元請の指示なしに追加業務をしないよ契約書面に記すことや、コミュニケーションをこまめに取ることが有効です。
まとめ
今回は元請や下請、一次請けの意味や、下請けと外注の違いなどについてわかりやすい例を挙げながら解説しました。
元請は下請の責任を負う立場にあり、下請はさらに一次請け、二次請けと分化されます。
このような構造は多重下請け構造とも呼ばれ、下請の労働環境の悪化などの問題を招くことも。
したがって元請と下請の関係においては、書面での契約をしっかりと結ぶなどの対策を取ることが重要です。