在庫引当とは? 意味や有効在庫との関係性、システムで管理できるかも解説

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物流業務において適切な在庫管理と行うには「在庫引当」の考え方が重要です。
しかし引当とは、どのような作業なのかわからない人も多いでしょう。
記事では、引当の意味や在庫を引き当てる方法、物流業務におけるメリットをわかりやすく解説します。
さらに引当作業の注意点やシステム管理をするメリットについても触れているので、ぜひ最後までチェックしてください。

引当の意味とは?

引当(ひきあて)とは、受注したときに商品在庫を確保しておくことを意味します。
別の言い方をすれば、注文に紐づいた発送予定の在庫と、まだ注文が入っていない在庫を区別する在庫管理の手法です。
受注業務において、顧客から注文されて商品がないことに気が付いたのではスムーズな発送ができません。
そこで、注文が入った時点で必要な商品数を取り置きする引当を行うのです。


なお引当は会計用語の貸倒引当金(かしだおれひきあてきん)とは意味が違います。
貸倒引当金とは取引先が倒産し支払いができなくなったときに備えて、あらかじめ損失額を計上する引当金のことを意味します。

在庫引当の計算方法

在庫を注文に引き当てる際、どのような計算が必要になるのでしょうか。
以下で在庫引当の概念と計算式を説明します。

在庫引当の考え方

上の画像は在庫引当ができていなかった例です。
在庫が50個のみの状態で、6月2日に40個、6月3日に30個受注しています。
その後6月5日に6月2日受注分の40個を出荷しているため、在庫の残りは10個。
翌日に6月3日に受注した30個を発送しようとしても在庫が足りず、発送できない状態になっています。
ここで在庫引当をする場合は、2日に受注した時点で40個を取り置きます。
すると、この後に対応できる商品在庫数は10個であることに気が付くはずです。

有効在庫数とは

在庫引当において、重要な考え方が「有効在庫数」です。
有効在庫数とは実在庫数から引き当てる在庫数を差し引いた在庫数量を意味し、引当可能在庫数ともいいます。
上の図で有効在庫数を見てみましょう。
6月2日では50個の実在庫数のうち、40個の受注がありました。
このとき有効在庫数は50個から40個を引いて10個。
実在庫数に関しては、まだ出荷が済んでいないためこの時点では50個のままです。
したがって今後別の注文が入った際には、有効在庫の10個のなかで対応しなくてはなりません。
このように、引当や有効在庫数を設定すると、実際に売れる数がいくら残っているかがわかりやすくなります。

在庫引当をするメリットと重要性

在庫引当の考え方を使って在庫を管理することには、自社や顧客に大きな意味があります。
以下のポイントを確認して在庫引当について理解を深めましょう。

適切な時期に仕入が可能

在庫が不足していると、必要なときに注文に対応できません。
そこで在庫引当を行うことにより、適切なときに商品の仕入れが可能になります。
一方で欠品を防止しようと商品を多めに仕入れて在庫を抱えると、無駄な管理コストが発生します。
今販売できる数量はどれくらいかを常に把握することで、在庫を適切な数量でコントロールできるでしょう。

在庫不足による顧客トラブルを回避

有効在庫数を把握していない場合、顧客から受注したものの在庫が足りずに出荷できないという事態が起こり得ます。
また在庫不足により当初顧客に伝えた発送予定日よりも実際の納品が遅くなると、顧客からの信頼度や満足度が下がる恐れも。
そこで在庫引当を設定すると、受注後に在庫がないことに気付いたという事態を避けることができます。

在庫情報を社内で共有できる

在庫情報を常にアップデートし、関係者が実在庫数と有効在庫数をわかるようにすると欠品・余剰在庫リスクを抑えることができます。
複数の商品を扱っている場合は、在庫をそれぞれ詳細に管理することが難しいケースも。
そのため、関係者全員が在庫情報を把握しやすい仕組みがあるとよいでしょう。
在庫管理システムを導入するなどして、一目で在庫の過不足がわかるようにするのがおすすめです。

在庫管理を効率化できる

有効在庫数を知っておくと担当者が商品を追加で仕入れるべきかどうか判断が早くなり、在庫管理の効率アップが見込めます。
また仕入れの時期が遅いと、せっかく受注した分をキャンセルせざるを得ないこともあり販売機会の損失につながってしまいます。
有効在庫数から欠品リスクを把握し、早めに商品を仕入れることで新規受注に備えることもできるでしょう。

在庫を引き当てる方法

在庫引当を実施する手法としては、手書きやエクセル、管理システムが考えられます。
それぞれの方法のメリットや注意点を見ていきましょう。

手書き管理

在庫引当は手書きで行う場合、受注、仕入、入庫、出庫、引当の表を作り、取引にしたがって数量をアップデートしていきます。
手書きだと在庫管理システムを導入するといったコストはいらず、低コストで在庫管理が可能です。
しかし取引が多いと煩雑になり、管理しきれない恐れがあります。

エクセルで管理

エクセルやGoogleスプレッドシートといった表計算ソフトを使う場合は、手書き管理よりも楽に在庫を引き当てることが可能です。
さらにマクロなどを活用すればより簡単に有効在庫を把握しやすくなります。
ただし関係者がエクセルを正しく操作できない可能性もあり、操作ミスや入力ミス、ファイル紛失などのエラーも起こり得ます。

在庫管理システムを利用

ヒューマンエラーを抑えたい場合やより効率性を求める場合は、在庫管理システムの導入も検討してみましょう。
在庫管理システムでは、受注やさまざまな工程での在庫情報や物流のデータを保存し一元管理できます。
有効在庫数の算出を自動で行ってくれるほか、受注内容を自動で入力できる在庫管理システムもあります。

在庫引当の際の注意点

間違った在庫引当を行うと、在庫不足や余剰在庫につながってしまいます。
在庫を引き当てる際は、いくつかのポイントをよく確認しながら作業しましょう。

受発注数を確認する

エクセルに数値を入力する場合、データの入力ミスによって誤った有効在庫数が算出される恐れがあります。
データ入力時には受注数や発注数をよく確認し、桁数や入力欄、計算方法にミスがないかチェックしましょう。

システムや管理表への入力漏れを確認する

システムや管理表への入力漏れは初歩的なミスの一つです。
受注や発注、出荷のタイミングで、入力作業を後回しにせずにすぐにデータを入力するのがコツです。
リアルタイムで最新の在庫数を反映するようにしましょう。

棚卸をして実在庫数とのズレを確認する

有効在庫数とは、実在庫数とは異なる理論上の数です。
そのため実在庫数が間違っていると、有効在庫数も誤った数字になります。
正しく在庫を引き当てるために、定期的に棚卸をして正確な実在庫数を把握するのがおすすめです。

物流代行にアウトソーシングするのも◎

自社の社員だけで在庫管理をするのが困難な場合は、物流代行サービス会社にアウトソーシングするのも方法です。
物流代行会社が在庫管理から発送を行ってくれることもあり、自社の社員は販促やマーケティングなどの業務に注力することができるでしょう。

まとめ

記事では在庫を引き当てる計算方法や有効在庫数の意味、物流におけるメリットを紹介しました。
顧客に商品を滞りなく発送し、かつ自社の在庫のダブつきを防げる引当は在庫管理において重要です。
引当を行うときには、入力ミスがないかや有効在庫数と実在庫数とのズレがないかもチェックしましょう。
受注から在庫引当、物流までより効率よく管理したい場合は、在庫管理システムの導入を検討するのもおすすめです。