形式知・暗黙知とは? 意味や具体例、暗黙知を形式知に変える方法などわかりやすく解説

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英語のtacit knowledgeに当たる暗黙知。
暗黙知の対義語は形式知ですが、それぞれの概念は何を意味するのでしょうか。
この記事では、暗黙知と形式知との意味や具体例についてわかりやすく解説します。
さらに暗黙知を形式知に変換するメリットや、形式知を生み出す方法についても紹介。
組織のマネジメントや研修などに携わる人はぜひ参考にしてください。

「暗黙知」とは? 「形式知」との違いをわかりやすく解説

ここでは暗黙知と実践知、形式知のそれぞれの意味の違いをわかりやすく解説します。
暗黙知と形式知は対義語の関係にあるので、それぞれの違いにも着目しましょう。

暗黙知の意味は?

暗黙知とは、言葉に表しにくい知識や経験を意味する言葉。
わかりやすくいえば暗黙知は「勘」や「コツ」「ノウハウ」のことで、英語ではtacit knowledgeといいます。
暗黙知は人に教えることが難しいため、習得するためには「習うよりも慣れろ」といった姿勢で実践を積むことが重要です。
暗黙知は一般的に、OJTつまり実際の仕事を通して習得することが効率的といわれています。

「実践知」とは暗黙知の一種

実践知とは暗黙知の中でも、実践を重ねることで身に着いた知識を意味します。
暗黙知と実践知の違いは、実践知は実践によって身に着けられた能力なのに対して、暗黙知は必ずしもそうでないこと。
暗黙知の中にはいくら経験を重ねても、個人の能力によってはなかなか身に着かないものも。
つまり実践知は暗黙知を乗り越えた結果であり、暗黙知の一種ともいえます。

対義語の「形式知」とは?

形式知とは英語のexplicit knowledgeに当たる言葉。
暗黙知の対義語で、言語や数式といった明確な形で表現可能な知識のことです。
暗黙知とは違い、形式知を習得するためには勘やノウハウはほとんど必要ありません。
形式知は言語化できるため、マニュアルや研修を通じて効率的に共有することができます。

暗黙知や形式知、実践知の具体例を解説

ここでは暗黙知、形式知、実践知の具体例をわかりやすく紹介します。
それぞれの違いに注目すると、理解が深まるでしょう。

暗黙知の具体例

暗黙知の具体例として、一輪車の乗車技術が挙げられます。
上手に乗るための直感や運動の機転を言語で一から十まで伝えることは難しく、練習を重ねた全員が乗れるようになるとは限りません。
また職人が長年の経験から習得した独自のノウハウや、英語などの言語の微妙なニュアンスを理解する能力も暗黙知の具体例です。

形式知の具体例

形式知の具体例としては、中学生で習う方程式の習得が挙げられます。
方程式は公式や計算方法を理解しそれを問題に当てはめることで、誰でも解くことができるでしょう。
ビジネスの領域では、マニュアル化されたライン作業のノウハウや経費精算など、勘に頼らなくても知識さえあればできる業務を形式知といいます。

実践知の具体例

車の運転歴が長くなると、「ここでハンドルを切れば駐車できるだろう」などの感覚が身に着いていきます。
このように実践により身に着いたノウハウは実践知。
梱包作業を具体例に挙げれば、指示書を見て瞬時にちょうど良い大きさのダンボールを見分けられる能力は多くの場合、実践知です。

暗黙知を形式知に変えるメリットとは?

暗黙知を形式知に変えることは、企業と労働者双方にメリットがあります。
ここでは形式知を蓄積することで期待できる効果をわかりやすく紹介します。

業務の属人化を防ぐ

暗黙知を形式知に変えることで知識が個人に依存することなく、組織全体で共有・活用できるようになります。
また新しいメンバーの教育や引継ぎがスムーズになり、組織の柔軟性と効率性を高めることが可能です。
属人化する業務を抱える人は、その仕事を一人で抱え込むことでストレスを抱えることもあります。
より働きやすい職場環境を作るためにも、暗黙知を形式知に変換し属人化を防ぐことは重要です。

ナレッジの蓄積・共有

暗黙知を形式知に変換することで、ナレッジの蓄積が促進され従業員間での共有が容易になります。
従来ベテラン社員しかできなかった仕事を他の社員もできるようになれば、職場全体のスキルアップに。
さらにスキルを形式知として効率的に共有することで教育コストの削減効果も期待できるほか、属人化の防止にもつながります。

業務の効率アップ

暗黙知はマニュアルとして伝えるのが難しいため、共有に時間がかかる場合が多いです。
しかしベテラン社員のノウハウを文章化、図式化し形式知に変換することができれば、効率的に社内教育を進めることができます。
また社内に蓄積された知的財産をデータベース化することで、業務上の意思決定をより早く行うことが可能になるでしょう。

適切な人事評価が可能に

暗黙知を使って結果を出しても、会社への貢献度や成果を本人が上手く伝えられない可能性があります。
そのため評価する上司がその業務経験を持たない場合には、適切な評価軸を設けられない場合もあるでしょう。
一方で形式知は担当者以外の人にも簡単に共有できるため、上司は部下の業務内容を理解したうえで妥当な評価基準を設定することができます。

暗黙知を形式知に変えるナレッジマネジメントの方法は?

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暗黙知を形式知に変えるナレッジマネジメントとして、SECIモデルが広く活用されています。
ここではSECIモデルをはじめ、ナレッジマネジメントに効果的な方法をわかりやすく紹介します。

SECIモデルを活用

SECI(セキ)モデルとは共同化→表出化→連結化→内面化の循環的なプロセスを意味します。
まず共同化では暗黙知を暗黙知としてチームに共有。
続く表出化では暗黙知を文章化、図式化し、形式知に変換します。
次の連結化は新しい形式と既存の形式知を結合し体系化する段階。
最後の内面化とは、形式知をチームの各人が実践し、また新たな既存知が生まれるプロセスです。
このフレームワークに沿ってナレッジマネジメントを行うことで、暗黙知を形式知に変換させることができます。

場(Ba)のデザインを行う

形式知を生み出すためには、チーム内での知識の共有が欠かせません。
その第一歩として重要な役割を果たすのが、場(Ba)のデザインです。
場とは社員が自由にアイデアを交換し、経験を共有するための環境を意味します。
例えば気軽に会話ができる社内のフリースペースや社内SNSなどが場の具体例。
場の創造により自由なコミュニケーションを促すことで、暗黙知は形式知へと円滑に変わっていくでしょう。

知識資産を共有する仕組みづくり

せっかく暗黙知を形式知に変換できても、その知識を共有できなければ意味がありません。
そのためグループ全員が形式知やノウハウにアクセスできるような仕組みを作りましょう。
知識を共有する際は紙よりも、共有しやすいツールを活用するほうが効率的です。
また文章では伝わりにくい知識に関しては、図や映像や音声を取り入れると知識共有が円滑に進みます。

ナレッジリーダーがマネジメントを行う

ナレッジリーダーを立てると、暗黙知から形式知への変換が上手く進みます。
ナレッジリーダーとは知識ビジョンやナレッジ共有の場づくりをはじめ、ナレッジマネジメントを推進する人。
リーダー中心に継続的な活動を行うことで、「チーム一丸となってナレッジマネジメントを行なおう」という組織風土が徐々に定着します。
ナレッジリーダーはプロジェクトの目的を明確化し、効果的なマネジメント方法を熟知することが必要です。

まとめ

今回は暗黙知と形式知の意味や違い、英語で何というかや具体例についてわかりやすく解説しました。
暗黙知とは形式知の対義語に当たり、言葉で伝えにくい知識を意味する言葉です。
社内に暗黙知が多いと、属人化が起こりやすくなるだけでなく業務効率の低下など様々なデメリットがあります。
そのためSECIモデルなどのフレームワークを活用して、可能な限り暗黙知は形式知に変換すると良いでしょう。