倉庫にはさまざまな種類がありますが、その中に「危険物倉庫」に分類されるものがあります。
危険物倉庫を建設する際は、換気設備や耐火構造などの設計、保有空き地についてなど多くの基準を遵守しなくてはなりません。
記事では、危険物倉庫とは何かや消防法における危険物、倉庫建設の際の注意点などを解説。
危険物の取り扱いを検討している人は記事をぜひ参考にしてください。
この記事を書いた人:受発注ライフ編集部
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危険物倉庫とは?
危険物倉庫とは、火災や爆発の危険性が大きい物質など消防法で定められた「危険物」を保管する倉庫のこと。
危険物倉庫は消防法によって建物の基準や構造、危険物の指定数量などが厳しく定められているのが特徴。
消防法の基準を満たし危険物を扱うことが可能な貯蔵所には、タンク貯蔵所、地下タンク貯蔵所などの種類があります。
そのうち、倉庫を貯蔵所として使用する場合は「危険物倉庫」といわれます。
消防法における危険物とは
消防法により、火災を発生させる危険性の高い物質が危険物として指定されています。
消防法第2条第7項
「危険物とは、別表第一の品名欄に掲げる物品で、同表に定める区分に応じ同表の性質欄に掲げる性状を有するものをいう。」
危険物は以下の6種類に分類され、下の図表は『別表第一』をまとめたものです。
危険物を取り扱う事業者はよく確認しましょう。
(類別と性質) | (品名の一部) |
第1類 | 酸化性固体 塩素酸塩類・過塩素酸塩類など |
第2類 | 可燃性固体 硫化りん・赤りん・硫黄・鉄粉・金属粉など |
第3類 | 自然発火性物質および禁水性物質 カリウム・ナトリウム・アルキルリチウムなど |
第4類 | 引火性液体 特殊引火物・第一石油類・アルコール類・第二石油類など |
第5類 | 自己反応性物質 有機過酸化物・硝酸エステル類・ニトロ化合物など |
第6類 | 酸化性液体 過塩素酸・過酸化水素・硝酸など |
危険物倉庫の位置や規模、構造の基準
危険物貯蔵庫を設計・建設する際は、法令で定められたさまざまな基準を満たさなくてはなりません。
位置や規模、構造の基準に注意しましょう。
位置の基準
危険物倉庫を建設する位置はどこでも良いわけではありません。
位置の基準については、2つのルールがあります。
一つは、学校や病院など近隣の各保安対象物から、適切な「保安距離」を確保すること。
もう一つは、倉庫の構造や危険物の貯蔵量に応じて、「保有空き地」を確保することです。
続く見出しでは、「保安距離」と「保安空き地」、それぞれの基準について詳しく見ていきます。
学校や病院などの保安対象物から、適切な保安距離を確保
万が一、危険物貯蔵庫で火災が発生した際は近くの施設に被害が及ぶ恐れも。
そのため、近隣に指定されている保安対象物がある場合、その施設ごとに定められた「保安距離」を保つことが決められています。
例えば、学校や病院、劇場など多数の人を収容する施設などからは30メートル以上の距離を保たなくてはなりません。
また重要文化財や重要美術品として認定された建物からは50メートル以上離れる必要があります。
危険物倉庫の周りには保有空き地を設け、指定数量を確認
危険物貯蔵庫の建設の際は、周りの建物への延焼を防ぎ、消火活動を行いやすくするために「保有空き地」を確保しなくてはなりません。
危険物の貯蔵量や倉庫の構造に応じて、保有空き地の幅も法令によって定められています。
例えば、指定数量の倍数が5以下の屋内貯蔵庫では0.5メートル以上など。
なお指定数量とは、消防法により「危険物についてその危険性を勘案して政令で定める数量」と定義されているものです。
規模の基準
危険物倉庫の規模は、基本的には軒高6メートル未満で平屋建であることが定められています。
第2類および第4類の危険物の一部に関しては、軒高20メートル未満までの高さの倉庫を建設することが可能。
延床面積については、1,000平方メートル以下と決められていて、保有空き地も考慮して設計する必要があるため注意しましょう。
構造の基準
危険物倉庫の構造や換気設備などについては、以下のような基準が定められているので、一つ一つ法令をチェックしてください。
他にも液状の危険物を保管する場合、床は危険物が浸透しない設計にし、傾斜をつけ、貯留設備を備えなくてはなりません。
また、危険物の貯蔵庫や製造所などであることを表示した標識や掲示板を取り付ける必要もあります。
- 壁や柱、梁、床などは耐火構造であること
- 屋根は不燃材料で造り、天井は設けないこと(例外あり)
- 窓や出入り口は防火対策を行い、窓や出入り口のガラスは網入りにすること
- 危険物の取り扱いに必要な採光・照明・換気の設備を設けること
- 指定数量が10倍以上になる場合は、避雷設備を設けること
危険物貯蔵庫以外で危険物の保管は可能?
危険物を保管する場合、法令に基づいて申請を行い、許可を得る必要があります。
しかし危険物が少量の場合は普通の倉庫やテント倉庫で保管できることも。
危険物倉庫以外で危険物の保管をする場合は、消防法の「指定数量」を確認しておきましょう。
危険物の品目によって指定数量が異なるため要注意です。
一般的に、指定数量が5分の1以上から指定数量未満の場合は少量危険物とみなされ、各市町村の条例により消防署に届出を行う必要があります。
地域によって条例の内容が異なるためよくチェックしましょう。
なお指定数量の5分の1未満(少量危険物)の保管については、規制を受けずに保管ができますが保管場所には注意です。
危険物倉庫を建設するには
危険物貯蔵庫を建設する際は、以下のような流れで進めるのが一般的です。
まず所轄の消防と事前協議を行い、倉庫を建設する場所の自治体に設置許可を申請します。
設置許可証を受け取った後に着工し、危険物倉庫の完成後は完成検査を申請しましょう。
そして検査後には完成検査証を受領します。
自治体によって申請や検査の手順が違うことがあるため、詳しくは倉庫を建設する予定の自治体に確認してください。
危険物倉庫を建設するときの注意ポイント
危険物倉庫を建設するには、消防法によって定められている建物の設計や換気の決まり、保有空き地の幅などを遵守する必要があります。
以下の注意ポイントをよく確認しておきましょう。
危険物倉庫の設計に関する法令を確認
危険物貯蔵庫を設計・建設する際は、消防法だけでなくその他の法令もチェックする必要があります。
都市計画法や建築基準法、港湾法、政令や条例といった法令も確認しなくてはなりません。
例えば建築基準法においては危険物倉庫を建てられるのは13種類ある用途地域の一部であり、危険物の量が多いとさらにエリアは制限されます。
建設する際は、各法令を必ず確認しましょう。
業者の危険物貯蔵庫の建築実績をチェック
危険物倉庫の建設には多くの決まりがあり、多大なコストや手間がかかります。
そのため業者を選ぶ際は、倉庫の建築実績が豊富な業者を選ぶのがおすすめです。
用途や目的に応じてどのような構造の倉庫を設計・建設するべきかアドバイスしてくれるでしょう。
危険物の取扱いは一歩間違うと周囲に大きな被害を与えてしまいます。
法令を遵守し、かつコストや手間を抑えた倉庫を建設するために業者選びにも力を入れましょう。
まとめ
記事では、危険物倉庫とは何かや、建設や設計におけるさまざまな基準などを解説しました。
危険物貯蔵庫を建設する際は、保有空き地の必要性、指定数量による制限といった消防法や各法令の知識が必要です。
事前によく確認しておかないと、知らないうちに法令違反になってしまう恐れも。
危険物貯蔵庫を建設する際は、建築実績が豊富な業者を選び、スムーズに建設を進められるようにしましょう。