見積書には多くの場合、有効期限が設定されていますが、その意味はあまり知られていません。
そこでこの記事では、見積書に有効期限を設定する意味や有効期限が過ぎた際の対応方法、記載例などについて解説します。
併せて見積書に関する法律的な規定や注意書きなどの書き方についても解説するので、見積もり作成担当の人も参考にしてください。
見積書に有効期限を設定する意味とは
見積書の有効期限を設定することには、顧客と業者双方にとって意味があります。
なぜ見積書には有効期限があるのか、社会人なら知っておいて損はないでしょう。
条件や価格変動に備える
見積書の有効期限を設定することには、条件や価格変動に備えるといった意味があります。
例えば建設業界では日雇いの作業員が多く、大幅に人件費が価格変動することも。
このような価格変動に備えて、業者は見積書に有効期限を設定しておくのです。
一方で顧客側も見積書の内容が有効期限内のみ有効であることを知れば、それに納得した上で契約を進めることができます。
早めに発注してもらいたい
顧客に早く発注してもらいたいという考えから、見積書に有効期限が設定される場合もあります。
顧客は1社だけでなく複数の企業を比較して、商材を選ぶことが少なくありません。
それに対して企業は、見積書に有効期限を設けて顧客が他社に心移りする隙を減らしたいのです。
また見積書の有効期限を目安にすれば、業者は契約がいつまでに入りそうかの目途を立てることも可能となります。
一般的な見積書の有効期限
見積書の有効期限は、2週間から半年の間で設定されることが一般的。
記載例としては、1ヶ月以内や月末までといったように切りの良い期間で設定されることが多いです。
しかし見積書の有効期限について法律的な決まりはなく、その長さは業種や業務内容によってかなり異なります。
例えば建設業界のように価格変動が激しい業界では、有効期限が短く設定される傾向があります。
見積書の有効期限に関する法律的な注意点
見積書の有効期限については、いくつか法律的な注意点があります。
知らぬ間に法律違反していたということにならないよう、確認しておきましょう。
見積書の発行は契約の申込みを意味する
民法第523条では、「承諾の期間を定めてした申込みは、撤回することができない」とあります。
この条目が指す「承諾の期間を定めてした申込み」には、有効期限が設定された見積書も。
すなわち、有効期限のある見積書は撤回することができないのです。
見積書の有効期限が失効するまでの間、契約を破棄することはできないのだと理解しておきましょう。
見積書の有効期限は撤回できない
前項で紹介した民法第523条により、見積書の有効期限を撤回することは禁止されています。
発行者の都合により、一度決めた見積書の有効期限を短くすることもできないのです。
また同条の第2項により、「申込者が前項の申込みに対して同項の期間内に承諾の通知を受けなかったときは、その申込みは、その効力を失う。」と定められています。
すなわち有効期限を過ぎた見積書は無効となるのです。
見積書の作成は義務?
見積書の作成は原則、義務ではありません。
見積書を作成するかどうかは、企業や個人の判断に委ねられています。
しかし例外的に建設業においては、建設業法により見積書の作成が法律的に義務付けられました。
また建設業法では工事種別ごとの材料費や労務費その他の経費の内訳など見積書の記載事項も詳しく定めれているため、記載する際には注意しましょう。
見積書が必要な理由とは
見積書が必要な理由は主に3つあります。
1つは、発注者と企業とのすり合わせを行うためです。
見積書には品目の内容や金額、数量、納期などが記載されますが、これらを明確にすることでお互い認識にずれがないか再確認していきましょう。
2つ目の理由は、取引の客観的な証拠として見積書には意味があるからです。
見積書がないと、契約後に企業が一方的に値上げ交渉するなどの問題が起こりかねませんが、見積書はそのようなリスクを防いでくれます。
3つ目の理由は、見積もりに取引の流れを円滑にする役割があるからです。
見積もりを作成することで契約予定の内容を前もって明確にできるため、契約開始までの手続きがスピーディーに進んでいきます。
見積書の書き方・記載項目 例文も紹介
ここでは一般的な見積書の書き方、記載例を紹介します。
有効期限の例文や注意書きの書き方も載せているので、参考にしてください。
タイトル・発行日
見積書の冒頭には、タイトルと発行日を記載します。
タイトルの記載例としては「御見積書」や「見積書」の書き方が一般的です。
発行日には見積書を作成した年月日を記載しましょう。
発行日があることで、後々管理の手間を減らすことができます。
作成者の情報
それが誰から受け取った見積書なのかを示すため、作成者の情報も見積書に盛り込みましょう。
作成者情報の記載例としては、企業と住所を書くケースや差出人の名前だけ書く場合など状況により異なります。
企業独自に書き方のフォーマットがあればそれに従うようにしましょう。
宛先・顧客名
宛名や顧客名の項目には、先方の会社名と所在地を書きましょう。
また場合によりは、担当者の氏名や部署名の記載も必要です。
宛名や顧客情報の記載を間違えると失礼に当たるので、名刺などと照らし合わせながら慎重に記入しましょう。
見積書番号
見積書番号の記載なしでも問題ありませんが、あると管理しやすくなります。
たくさんの顧客と取引していると、次第に管理する見積書が膨大となり探し出すのが難しくなっていくでしょう。
そんな時、見積書番号を振って順番ごとに保管していれば、すぐに見つけ出すことができます。
件名・施行日(予定日)
工事やプロジェクトなどの見積書を作成する場合には、その件名と施行日(予定日)も記載しておきましょう。
いつどこでどんなプロジェクトを実施する予定なのか見積書に記載しておくことで、契約の段階での認識ミスをなくせます。
商品概要・見積金額
商品の品目名や見積もり金額、発注数などの商品概要は、見積書に必ず書くべき内容です。
納期などの具体的な情報も記載しておくと、後々トラブルを防ぐことができます。
また建設業では、施工場所など工事や契約に関わる具体的な内容を見積書に記載するよう定めれているので書き方には注意しましょう。
見積もり有効期限
見積もりの有効期限に関して、記載なしでも法律上は問題ありません。
しかし前述の通り見積もりの有効期限には価格変動に備えるなどの意味があるため、必要があれば記載しておきましょう。
記載例としては、以下の例文のように年月日を示す方法や、「見積もり後1ヶ月間」といった書き方があります。
・見積後1ヶ月後
・発行日より14日間
・2024年5月30日まで
備考・注意書き
その他に企業から受け取り主に共有しておきたいことがあれば、備考や注意書きの欄に記載しましょう。
備考には、見積書に関する補足や価格変動に備えた注意書きを記載する場合が多いです。
特に注意書きに書くことがない場合は、短い挨拶を書いても良いでしょう。
以下に注意書きの例文を記載します。
・金額は価格改定により変動する可能性があります。ご了承いただきますようお願い申し上げます。
見積書の有効期限が過ぎたらどうなる?
前に紹介した民法第523条により、有効期限を過ぎた見積書は無効です。
したがって見積書の有効期限が過ぎた場合は、見積書の再発行が必要となります。
数日程度有効期限を過ぎたけであれば、契約内容が変更や無効となることは少ないでしょう。
しかし1ヶ月、1年と見積書の発行が過ぎた場合には、価格変動や条件の変更が生じることもあります。
見積書の有効期限が過ぎた場合、まず発行主に連絡をしましょう。
有効期限の記載なしは問題ないのか?
見積書の有効期限は記載なしでも、問題ありません。
ただしここで問題となるのが、見積書の撤回についてです。
有効期限の記載なしの見積書については、民法第525条により「申込者が承諾の通知を受けるのに相当な期間を経過するまでは、撤回することができない」と定められています。
つまり有効期限の記載なしの見積書を撤回するタイミングは、その取引内容や状況を見て個別に判断しなければなりません。
まとめ
今回は見積書に有効期限が設定されている意味や、見積書の書き方、注意書きの記載例について解説しました。
見積書の有効期限は記載なしでも問題ありませんが、価格変動に備える意味では明記したほうが良いでしょう。
また建設業については見積書について独自のルールが法律により定めれているので、見積書の書き方には特に注意しましょう。