保税倉庫は、国際貿易の円滑化などの役割を果たす重要な存在。
この記事では保税倉庫に関する基礎知識から、その必要性やメリット・デメリット、注意すべきポイントなどを詳しく解説します。
また保税倉庫を利用する際の保管料や、搬入から商品が届くまでの所要時間などの具体例についてもわかりやすくまとめました。
保税倉庫(保税蔵置場)についてわかりやすく解説
保税倉庫は国際貿易において重要な役割を果たす施設です。
ここでは、保税倉庫とは何なのかやその必要性、保税蔵置場との違いについてわかりやすく解説します。
保税倉庫ってなに?
保税倉庫とは通関手続きがまだ完了していない輸入貨物を、一時的に保管するための施設のこと。
正式には保税蔵置場と呼ばれ、倉庫内の輸入貨物は関税や消費税などの税金の支払いが保留されています。
また保税倉庫は外資系企業が輸入した貨物に生産や加工をして再輸出する際にも使われます。
保税倉庫は一時的に輸入貨物の税金の支払いを留保することで、国際貿易をサポートしているのです。
なぜ保税倉庫が必要?
保税倉庫は輸入品の管理において欠かせない存在です。
例えば食料の輸入品を保税倉庫に搬入した後、食料品の選別や洗浄、ラベル添付などの簡単な加工業務を行うことが可能。
保税倉庫を使用することでこれらの業務が関税や消費税の支払いなしに行えるため、コストや時間を削減するのに役立ちます。
また保管倉庫は法的にも守られている施設のため、安心して大事な貨物を保管できる点もポイントです。
保税蔵置場と保税倉庫の違いとは?
保税蔵置場と保税倉庫とは、基本的には同じものを指します。
保税蔵置場とは関税法で定められた正式な用語であり、輸出入に関する公式な文書ではこの言葉が使われます。
一方、保税倉庫はビジネスシーンで頻繁に使用されるより一般的な表現。
わかりやすく説明するなら、保税蔵置場は公式文書用の表現、保税倉庫は一般的な呼び方です。
国際物流における保税倉庫の利用方法とは?
国際物流を理解する上では、保税倉庫の利用方法を把握することは欠かせません。
また海外から取り寄せた商品が届くまでの流れを知りたい人も、以下の内容を参考にしてください。
搬入
貨物が国外から届くと、まずは保税倉庫への搬入が行われます。
この段階では輸入品は外国貨物として取り扱われ、関税や消費税の徴収が一時的に保留される状態です。
また搬入の際には外国貨物仮陸揚の届出が必要で、これは貨物が税関に到着する前に提出しなければなりません。
貨物が保税倉庫に到着すると、続いて荷下ろしや取卸しの手続きが進められます。
検査
保税倉庫に搬入された貨物は、「他法令手続きに関する検査」を行います。
他法令とは関税以外に関わる法令で、例えば食料品に関わる「食品衛生法」、農産物に関わる「植物防疫法」などが他法令に該当します。
他法令の中には植物検疫法など外国の政府機関からの証明書が必要なものもあり、検査完了までに時間が掛かることがあるので注意が必要です。
輸入申告
保税倉庫に搬入された貨物は輸入申告が必要です。
輸入申告とはわかりやすく解説すると、税関長に対して貨物の輸入をしたい旨を申告する手続きです。
これは輸入者が保税倉庫を管轄する税関に対して行う手続き。
貨物の種類によっては他法令の許可書や証明書、原産地証明書、減免税明細書など、追加の書類が要求されることもあります。
輸入申告に必要な主な書類
- 仕入書(商業送り状/インボイス)
- 運賃明細書
- 保険料明細書
- 包装明細書(パッキングリスト)
- 船荷証券または海上運送状
- 他法令の許可書や証明書等
許可を得て出庫
輸入許可が下りると輸入許可通知書が発行され、保税倉庫から動かない状態だった貨物を出庫する準備が整います。
輸入許可通知書を受け取ったら関税や消費税など関連する税金を支払い、輸入許可を確認できたら出庫可能です。
この際税関の許可を得ていない状態で出庫してしまうと、密輸と見なされる可能性があるため注意しましょう。
保税倉庫で貨物を扱うメリット
保税倉庫は、国際貿易においてさまざまなメリットがあります。
ここでは保税倉庫を活用する上での利点をわかりやすく解説します。
輸出入の作業を効率化
保税倉庫内では税関長の許可を得れば、商品の生産や加工ができます。
例えば、検品やラベル張り、仕分けなどの作業を保税倉庫内で行うことが可能。
通常であれば、これらの作業は保税倉庫からは離れた工場で行う必要があります。
その代わりに保税倉庫内で作業を一元的に行うことで、工場に運ぶまでの時間を削減できるのが保税倉庫で貨物を扱うメリットです。
経費を抑えられる
保税倉庫の貨物は、置いておくだけで経費の削減もできます。
保管期間中は関税や消費税が発生しないため、長期保管する場合でも税金を安く抑えることができます。
貨物内に不良品がある場合でも関税を支払う前に廃棄処分ができるため、不要に税金を支払う必要はありません。
また保税状態のまま輸出者への返送や、他国への転売も可能です。
貨物を安全に保管できる
貨物を安全に保管できることも、保税倉庫で貨物を扱うメリットです。
保税倉庫は税関長の許可を受けた安全な施設。
保税倉庫に置かれた荷物は外国貨物として厳重に管理されるため、盗難や損傷のリスクはかなり低く、安心して商品を保管できます。
また保税倉庫のみで一元的に在庫管理ができる点も、流通業務をスムーズに行う上での大きなメリットとです。
保税倉庫で貨物を扱うデメリット
保税倉庫は国際貿易において多くのメリットがある一方で、デメリットもあります。
ここでは手続きの煩雑さなど、保税倉庫のデメリットをわかりやすく解説。
手続きが複雑
保税倉庫を利用する際、適切な通関手続きを行うにはある程度の専門知識が必要です。
知識不足の状態で手続きを行った場合、追加コストが発生したり、最悪の場合罰則の対象となったりする恐れもあります。
また手続きに遅れが生じると、輸入後の業務スケジュールに影響を及ぼすことがあります。
特に生鮮食品などの場合、手続きが長引くと品質そのものに悪影響を及ぼしてしまうケースも考えられます。
在庫破棄の可能性がある
保税倉庫で貨物を保管する期間は原則として2年間で、申請し承認を受けることができればさらに延長することも可能です。
ただしこのような長期保存によって、商品の廃棄が必要となる可能性もあります。
特に有効期限がある商品の場合、期限切れによる在庫廃棄の可能性も高くなってしまうため在庫過多にならないよう注意が必要です。
保管料はどれくらいかかる?
保税倉庫の保管料は、契約の種類によって異なります。
管理や搬出作業も任せる寄託契約では商品そのものに基づく保管料が発生し、賃貸借契約では借りるスペースの大きさが保管料の基準になります。
また保管料は貨物の個数、容積、坪数、パレット数、重量など、様々な要素に基づいて算出されます。
例えば成田空港近くの成田倉庫では、50坪以上利用で一坪あたり月額3,500円の保管料から利用可能です。
保税倉庫搬入から届くまで何日かかる?
保税倉庫への搬入から商品が届くまでの所要時間は、輸送手段によって異なります。
海上貨物の場合、入港から輸入許可までの平均所要時間は約2.5日、航空貨物では平均0.5日が目安です。
通関申告から許可までの時間に限定すると、海上は平均2.4時間、航空は0.3時間ほど必要です。
貨物が保税倉庫から動かない場合は?
海外通販で購入した商品が保税倉庫に搬入された後は、通常1日~2日程度で次の工程に進みます。
もし表示が「保税倉庫へ搬入」のまま変わらず動かない場合は、何らかの問題が発生している可能性もあります。
対応策としてはまず購入したショップに連絡を取り、「倉庫から表示が動かない」という状況を伝え確認を取ってもらいましょう。
通常は起こりにくい状況のため、早めに問い合わせをする方が良いです。
まとめ
保税倉庫の役割と重要性のほか、保税倉庫と保税蔵置場との違いなどについてわかりやすく解説しました。
保税倉庫とは国際貿易の効率化とコスト削減に貢献し、輸出入を円滑に進めるために重要な場所です。
安全に貨物を保管できるなどあらゆるメリットがある反面、必要な手続きを守らないと法律的な処罰の対象となる場合もあるため注意しましょう。
長期的に保管する場合は保管料を考慮し、商品廃棄が起こらないよう在庫管理も必要です。