輸送費用を抑える方法として注目される、ドレージ輸送。
ドレージ輸送ではデバンニングが不要なため、コスト削減のほか輸送時間を短縮できるメリットがあります。
しかしドライバーの不足や燃料費の高騰などの課題も抱えているのが現状です。
記事ではドレージとは何かやコンテナの種類、どのような場合にドレージを利用する意味があるかなどを解説。
メリットやデメリットを把握し、ドレージ輸送についての理解を深めましょう。
この記事を書いた人:受発注ライフ編集部
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ドレージとは?
ドレージとは、海外から輸送されたコンテナを港でデバンニング(荷下ろし)せず、目的地までトラックなどで輸送する方法を意味します。
ドレージ輸送では、車両の先頭にコンテナを接続して輸送し、この作業を「ドレー」ともいいます。
税関検査はコンテナごと行う場合とコンテナから荷物を取り出して行う場合がありますが、輸送にかかる時間とコストを削減できるのがポイントです。
ドレージ輸送で載せるコンテナの種類
ドレージ輸送で使うコンテナにはいくつか種類があります。
それぞれのコンテナの意味や特徴をチェックしましょう。
ドライコンテナ
ドライコンテナとは、身近な日用品から工業製品の輸送まで、幅広く使用されているコンテナを意味します。
密閉構造になっているので荷物を雨風から防ぐことが可能です。
特殊な機能は備えていませんが、比較的価格が安いのが特徴です。
リーファーコンテナ
リーファーコンテナとは、コンテナ前方に冷凍冷蔵機器を備えており、温度調節が可能なコンテナのこと。
食品や精密機械、医薬品などの貿易で使われています。
壁に断熱材が組み込まれているため、ドライコンテナよりも積める荷物量は少ないです。
オープントップコンテナ
コンテナの上部に屋根がついていない、もしくは取り外しができるタイプで、背の高い荷物を輸送するのに適しています。
クレーンを使ってコンテナ上部から荷物を出し入れすることも可能です。
輸送する際は、コンテナ上部を専用シートで覆って配送します。
フラットラックコンテナ
フラットラックコンテナとは、屋根や側壁がないタイプで、通常のドライコンテナなどでは配送できない大型貨物を運ぶときに使われます。
建設機械などの重量のある貨物を積み込むため、床の強度が高いのも特徴。
配送する際は、貨物をシートなどで覆って積み込んで運びます。
タンクコンテナ
タンクコンテナとは気体や液体を輸送するのに特化したコンテナを意味します。
液体や機体の漏れを防ぐために安全装置を備えていて、酒類や生乳、化学品などの貿易輸送に利用されています。
国際輸送以外にも、鉄道などの様々な手段の国内輸送で利用されているコンテナです。
ドレージのメリット
ドレージ貿易のメリットとはどのようなものがあるでしょうか。
ドレージの利用料金や、輸送時のメリットを紹介します。
デバンニングしないため、費用が安くなる
ドレージ輸送ではデバンニング作業が不要となるため、人件費や手数料などの物流コストを削減できるのがポイントです。
一般的に、輸入時のデバンニング作業はコンテナ到着後2時間以内に終わらせる必要があり、時間を超過すると追加料金が発生してしまいます。
ドレージ貿易によって、デバンニングにかかる手数料や追加料金などの費用を削減できるのが大きなメリットです。
輸送時間を短縮できる
デバンニングを行う方法では、貨物をコンテナから取り出す、積み替え場所まで運ぶ、トラックに積み替えるなどの作業が発生します。
しかしすでに説明したように、ドレージ貿易ではデバンニング作業が必要ありません。
そのため税関によるチェックが終わり次第、すぐにコンテナのまま配送先に荷物を運べるので、トータルの輸送時間を短縮できます。
荷物が破損しにくい
ドレージ輸送では、荷物の積み替え作業が必要ないため商品が破損するリスクを抑えられるのがメリット。
港で積荷、積み降ろしを行う場合、作業員の不注意によって荷物が傷がつく恐れがあります。
トラブルが発生した場合、フォワーダーや保険会社に連絡して補償条件などを確認するなどの手間が発生することも。
ドレージ輸送を利用すればコンテナのまま目的地まで運べるので、作業中の荷物の破損リスクを軽減できます。
ドレージのデメリット
コスト削減や作業時間の短縮など、さまざまなメリットがあるドレージ輸送ですがデメリットもあります。
以下の項目をチェックしデメリットを把握しておきましょう。
確保が難しい
便利なドレージ輸送ですが、現在はドレージの確保が難しくなっている側面も。
その理由はいくつかあり、一つにはドレージ製造の部品や材料の不足が挙げられます。
ドレージを製造する部品や材料、人手が不足していて、需要に対して在庫に余裕がない状況です。
またドライバー不足やターミナルの混雑もドレージ確保を難しくしています。
フォワーダーにドレージ確保を予約する場合、特に繁忙期は早めの予約が重要です。
輸送料が高騰している
ドレージ輸送のメリットとして物流コスト削減を挙げましたが、ドレージ輸送料金は高騰しているのが現状です。
その原因としては、主に燃料代の値上がりが背景にあります。
ドレージ輸送の料金が上昇したことで、ドレージ配送を受け付けない業者も。
また、燃料価格の上昇によるコストの増減分を別建て料金として設定する燃料サーチャージを導入する業者も登場しています。
ドレージの確保が難しくなった背景
ドレージの確保が難しくなった背景には、どのような問題があるのでしょうか。
人手不足、トレーラー不足などの背景について詳しく解説します。
人手不足
多くの業界や職種で共通していますが、少子高齢化の影響でドライバーの数が不足しています。
ドレージドライバーが次々に引退する一方、拘束時間が長く待遇が低いなどのマイナスイメージから若いドライバーがなかなか増えない状況です。
そのため、ドレージ輸送を依頼したくても、ドライバーが対応できないという問題があります。
トレーラー不足
これまでは輸送されてきたコンテナを港でデバンニングして運ぶのが一般的な方法でした。
そのため、重量がある大きなコンテナをそのまま陸上輸送できる牽引機が不足している状況です。
コンテナの総重量が約20トン以上になるケースでは車輪の多いシャーシを使うなど、重量によって利用する牽引機が異なります。
トレーラーのドレージの際は、早めに確保しておくように注意しましょう。
ターミナルの混雑
コンテナターミナルは混雑しやすく、ドレージドライバーの待機時間は6時間以上になることも。
歩合給制のドライバーの場合、待ち時間は給料が発生せず、ターミナルの混雑は収入に打撃を与えます。
また台風などの災害が起こった後はターミナルが混雑し、ドレージ手配ができずに寄港先を変える業者間で事故が起こる危険も。
こうした背景を理由にドレージ輸送を受け付けないドライバーが増え、ドレージの供給不足に繋がっています。
コロナによるドレージ業者の減少
2020年からの世界的なコロナウイルス流行下では、貿易を含むさまざまなビジネスが縮小し、ドレージ業務の需要も減少しました。
元から新しいドライバーの流入が少ないことなども課題でしたが、ドレージ業者の仕事が減ったことでドレージドライバーを辞めた人々もいます。
コロナが終息するにしたがって、世界間での貿易は以前のように盛んになってきていますがドレージドライバーの数が足りていない状況です。
コンテナドレージの輸送料金について
ドレージ輸送を利用する際の料金体系について解説します。
追加料金なども発生することがあるのであらかじめ費用を予想しておきましょう。
ドレージの料金体系
ドレージの料金体系は基本的にラウンド制です。
ラウンド制とは港から目的地までの往復距離で料金が決まる料金体系を意味し、配送地域別に基本料金が定められています。
ただし、このラウンド制で決められた輸送料以外にも、追加料金が発生するケースも。
追加料金にはコンテナをトラックから降ろす作業のためにドライバーが待機するドライバー待機料金や、ドレージのキャンセル料金などがあります。
輸送料金の相場
ドレージ費用の相場は往復距離やドレージ業者によって異なりますが、大体の費用の相場は以下の通りです。
東京から北関東:50,000円~70,000円
東京から静岡:60,000円~120,000円
他にも、コンテナの総重量が20トン以上になる場合はシャーシの追加料金が課されるので要注意です。
コンテナドレージ利用がおすすめの条件
メリット、デメリットともにあるドレージ輸送ですが、ドレージ利用がおすすめなケースとはどんな場合でしょうか。
自社の条件を考慮し、ドレージを選ぶべきか検討しましょう。
荷物量が多い
ドレージ輸送を検討する場合、20フィートコンテナ1個分ほどの荷物量があるかチェックしましょう。
ドレージ輸送は小口輸送よりも運送料金が高いため、少量の輸送の場合は逆に価格が高くついてしまいます。
20フィートコンテナの最大積載量はおよそ32立方メートルで約10パレットほどの量です。
最低でも半分の15立方メートルの荷物量がある場合にドレージ輸送を検討しましょう。
トラック到着後、すぐにコンテナから荷物を出せる
ドレージ輸送では、搬入先でコンテナの荷物をすぐに出すオペレーションも大事です。
トラックドライバーは空になったコンテナを港に戻す必要があります。
搬入先に荷物を届け、コンテナから荷物を出す間、ドライバーは現場で待機しなくてはなりません。
待機時間が長いと待機料金が発生し、コストが上昇することに。
そのためコンテナから素早く荷物を取り出せる人手とオペレーションを搬入先で準備しておく必要があります。
搬入先がターミナルから近い
コンテナを輸送する目的地が港のターミナルから近い場所にあるかどうかも確認しましょう。
港からの距離が長いと、輸送料金が高くなってしまいます。
ドレージ輸送では空のコンテナをドライバーが港に持ち帰るため、輸送料金は往復距離で計算されるラウンド制が主流です。
距離が遠すぎると輸送費用が割高になり、ドレージ輸送のメリットを感じづらいでしょう。
まとめ
貿易業界で耳にするドレージ輸送の意味やコンテナの種類、メリットやデメリットなどについて解説しました。
従来のデバンニングが必要な輸送方法と比較してメリットが多くありますが、人手不足などによりそもそもドレージ確保が難しい側面も。
またドレージ輸送は、状況によって費用が割高になるケースもあるので条件を確認しておくのがおすすめです。