小売業の在庫管理において、よく使われる指標の1つが交差比率(交叉比率)。
しかし交差比率(交叉比率)を理解するには在庫回転率や粗利益率などの専門知識や計算が必要なため、難しく感じている人も多いでしょう。
そこでこの記事では、交差比率の意味や計算式、目安などををわかりやすく解説します。
併せて交差比率を活用した販売戦略についても触れるので、小売業に携わる人は必見です。
交差比率(交叉比率)とは?
交差比率(交叉比率)とは、在庫がどれだけ売れているかを示す指標。
この指標はスーパーやコンビニエンスストアなどの小売業界で、在庫管理や販売方法の適正化を目的に用いられてきました。
交差比率が高いということは在庫が少なくても売上が高いということで、在庫管理が効率的であると評価できます。
反対に交差比率が低いということは在庫が多くても売上が低いということでなので、在庫数や販売方法の見直しが必要です。
交差比率(交叉比率)の計算方法
交差比率(交叉比率)は在庫回転率に粗利益率をかけることで計算できます。
ここでは交差比率の計算式と、その際に必要となる在庫回転率、粗利益率の計算方法をわかりやすく解説。
交差比率(交叉比率)の計算式
交差比率の計算式は在庫回転率と粗利益率の積です。
例えば、ある商品の在庫回転率が2、粗利益率が70%だとします。
このとき、交差比率の計算式は2×70=140%となります。
また%の単位を使わずに、2×0.7=1.4と計算しても問題ありません。
在庫回転率と粗利益率の計算式は以下の項目で説明しているので、そちらも併せて確認してください。
・交差比率=在庫回転率×粗利益率
在庫回転率の計算方法
在庫回転率とは、わかりやすく言えば商品の売れる速さです。
この数字が高いほど、商品がよく売れているということになります。
在庫回転率を計算するにあたって、まず売上原価を求めます。
売上原価とは、商品の製造や仕入れにかかった費用のこと。
次に、平均在庫高を求めます。
平均在庫高は、期首商品棚卸高と期末商品棚卸高を足して2で割ると算出される数値です。
最後に売上原価を平均在庫高で割り、在庫回転率を計算します。
・在庫回転率=売上原価÷平均在庫高
・売上原価=期首商品棚卸高+当期商品仕入高-期末商品棚卸高
・平均在庫高=(期首商品棚卸高+期末商品棚卸高)÷2
粗利益率の計算方法
粗利益率とは、売上高に対する粗利益の割合を表す指標で、売上総利益とも呼ばれます。
粗利益率の計算式は、粗利益÷売上高。
この値が高いほど、1つの商品から高い利益が生み出されたことを意味します。
粗利益とは、売上高から売上原価を差し引いたものです。
また売上高とは一定期間で得られた、売上の合計金額のことをいいます。
・粗利益率=粗利益÷売上高
・粗利益=売上高-売上原価
・売上高=期首商品棚卸高+当期商品仕入高-期末商品棚卸高
交差比率(交叉比率)はどのくらいが目安?
交差比率(交叉比率)の目安は200%以上です。
交差比率が200%の目安を上回るとき、その商品は効率的に儲けを出していると評価できます。
そのような商品に対しては、在庫を常に切らさないように重点的に管理すると良いでしょう。
一方で交差比率が100%を下回る場合、在庫があまり利益に繋がっていないということを表します。
交差比率(交叉比率)を求める際の注意点
交差比率が高い商品は企業の売上に繋がりやすいため、在庫管理を強化することが重要です。
だからといって、無闇に在庫を増やすのは危険です。
在庫が多くなると商品の鮮度が低下したり、在庫管理にコストがかかったりします。
交差比率は単に儲かりやすい商品を見つけるための指標ではなく、適切な在庫管理を行うための指標でもあるということを忘れないでください。
利益を上げる3つのパターン
粗利益率と在庫回転率の関係から、販売戦略は薄利多売、中利中売、厚利少売の3つの分けられます。
ここではそれぞれの販売戦略の特徴をわかりやすく解説。
薄利多売
薄利多売とは、粗利益の低い商品やサービスを多くの顧客に販売することで総利益を高めるモデルです。
1年の粗利益率は5%と低くても在庫回転数が40回なら、交叉比率は200%で高くなります。
ただし、たくさんの商品を仕入れるため発注や物流コストがかさみやすいのが特徴。
また粗利益が低いため、売上が減少したり原価が上昇したりすると、すぐに赤字に陥る可能性があります。
中利中売
中利中売とは商品を高くも安くもない価格に設定して販売量を適度に確保することで、利益率を高くする販売戦略です。
粗利益率も在庫回転率もほどほどの商品は、中利中売に該当します。
例えばお風呂掃除に使うブラシなど、中利中売される商品には地味だけど実用的なものが多いです。
中利中売の商品は安定的な利益を生み出すため、地味な商品でも顧客の目の留まりやすい場所に陳列するなどの工夫が必要となります。
厚利少売
厚利少売とは、高い単価で少量の商品を販売することで利益率を高める戦略です。
粗利益率が高く在庫回転率が低い商品は、厚利少売といえます。
例えばハイブランドバッグや高級食材、宝石などは厚利少売に当てはまります。
厚利少売は品質や付加価値が高く、顧客のニーズに合致している場合に有効です。
簡単には売れづらく、顧客に丁寧な説明をしたりアフターサービスを付けたりするなどの工夫が必要です。
粗利率と在庫回転率の関係性から見る商品の分類
粗利率と在庫回転率の関係性から、商品を4パターンに分類できます。
前述した薄利多売などの小売業の販売戦略とも密接に関わるので、併せて参考にしてください。
売れ筋商品(客寄せ)
売れ筋商品(客寄せ)とは客の目を引き店舗に入ってもらうための商品のことで、一般的に薄利多売にあたります。
例えば割引率が高い商品、今話題の限定商品などは売れ筋商品になりやすいです。
稼ぎ筋商品(稼ぎ頭)
稼ぎ筋商品(稼ぎ頭)とは粗利益率と在庫回転率がどちらも高く、店の収益に貢献する商品のこと。
稼ぎ筋商品には品質が高く付加価値が大きく、競合他社との差別化ができるものが多いです。
見せ筋商品(棚埋め商品)
見せ筋商品とは旬を過ぎた商品など在庫処分の対象となるような商品で、粗利益率も在庫回転率も低いです。
利益はあまり見込めませんが、売れ筋商品と一緒に陳列することで店の品揃えを豊富に見せる効果があります。
儲け筋商品(滞留品)
儲け筋商品とは粗利益率は高いが在庫回転率は低い、厚利少売にあたる商品です。
売れ筋商品と比べて目立ちにくいので、積極的におすすめしたり割引や特典を付けたりする必要があります。
交差比率を上げる方法:粗利益率を上げる
交差比率(交叉比率)を上げるには、まず粗利益率を高めることが必要です。
ここでは、小売業などで粗利益率を高める方法をわかりやすく紹介します。
売値を上げる
粗利益率を上げる方法の1つは、売値を上げることです。
売値とは商品を実際に販売するときの価格。
売値を上げると粗利益率が上がるため、交差比率の上昇を期待できます。
しかし大幅に売値を上げると客離れに繋がるため、値上げ幅の調整には注意が必要です。
売上原価を下げる
売上原価を下げることも、粗利益率を上げる方法です。
売上原価とは、商品やサービスを提供するためにかかった費用のこと。
売上原価を下げるには仕入れ先との値段交渉や、より安く原材料を調達できる仕入れ先を探すなどの対策が必要となります。
交差比率を上げる方法:在庫回転率を上げる
交差比率(交叉比率)は粗利益率だけでなく在庫回転率を上げることでも、改善できます。
ポイントは販売機会の拡大と、在庫数削減です。
販売機会を増やす
在庫回転率を上げるには、販売機会を増やすことが重要です。
例えばSNSを使った商品のプロモーション強化や販売店舗やサイトの拡大などの対策により、販売機会を増加することができます。
また売れ行きの悪い商品に対しては、顧客の目が留まるように陳列方法を工夫することが効果的な対策です。
在庫数を減らす
在庫回転率が悪い商品に対しては在庫一掃セールにより在庫数を減らすことで、在庫回転率アップが可能です。
また各商品の適正在庫を把握して、過剰在庫が生まれないよう在庫管理することも重要です。
適正在庫とはわかりやすく言うと、欠品も過剰在庫も生み出さない、企業が利益を上げるために最適な在庫数のこと。
まとめ
今回は交差比率(交叉比率)の意味や計算式、活用方法をわかりやすく解説しました。
交差比率は主に小売業界で、在庫管理や販売方法を決定する際に用いられる指標です。
200%が目安となりますが、最適な販売戦略を立てるためには粗利益率と在庫回転率それぞれにも注目する必要があります。
小売業などの販売業に携わる人は、ぜひ交差比率を目安に在庫管理や販売方法を見直してみてください。